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「じゃあ、私は本部に戻るわね。」
全てが終わり、ギルと別れた私たちに
ミラさんが白いマントを翻しながら言った。
その時、ロディが口を開いた。
「ミラ。これ持ってけ。」
「!」
ひゅっ、と、ロディはミラさんに向かって何かを投げた。
ぱし、と受け取ったミラさんの手元を見るとそれは小さなUSBメモリーだった。
「…何?」
ミラさんが怪訝な顔をしてロディに尋ねるとロディは、さらりと答えた。
「俺が、あるツテから入手したダウトの情報だ。デマじゃないから安心しろ。
これを使えば、過去のことや、エンプティのことも追いやすい。」
!
ダウトの情報…?
私とミラさんが驚いてロディを見上げると
ロディは表情を変えずに言葉を続けた。
「本来、俺はギルにしか情報を流さないが、今回は例外。
傷の治癒と手を貸してくれた礼……と、
心配かけて泣かせた詫びだ。」
「っ!」
ミラさんは、小さく目を見開く。
しかし、すぐにいつもの表情に戻ったミラさんは
微かに優しげな笑みを浮かべたロディに向かって口を開いた。
「礼としてなら、遠慮なく受け取っとくわ。
…“情報屋”。次は助けたりしないから。」
「あぁ。“あんた”との共闘はこれっきりだ」
…!
静かに視線を交わし合った二人は、お互い背を向けて歩き出した。
「…酒場に帰るぞ、嬢ちゃん。」
ロディは、私に声をかける。
!
私は、それを聞いて、はっ!とした。
ばっ!とミラさんに向かって呼びかける。
「ミラさん!
レイはまだ捕まってるんですか…?!」
その時、ぴたり、と足を止めたミラさんが、小さく振り向いた。
そして、どこか感情を隠すような声で私に答える。
「…安心して。レイ君は釈放された。昼間は目の前で彼を連れて行って悪かったわね。
今頃、酒場でルミナさんの帰りを待ってると思うわ。」
…!
私が、ほっ、と胸をなでおろすと
ミラさんは微かに目を細めて再び歩き出す。
私は、その凜とした背中を、じっ、と見つめていた。
…よかった。
レイは、釈放されたんだ。