あたしはあの時のように右側に座り、空いている左隣にそっと手を当てた。
そこは冷たくて、あたしを暖かく包んでくれる温もりは、ない。
「隼斗……っ」
頬を暖かいものがつたり、ゆっくりとあたしの心を乱していく。
「なんでいないんだよ……っ」
周りなんて気にせず、顔を涙でぐちゃぐちゃにした。
どこを見渡しても愛おしい姿はない。
追いかけて、追い求めた光。
その暖かい光がない世界で生きていけっていうの……?
「隼斗がいなきゃ……幸せになんかなれない!」
隼斗のいない世界でなんか生きていけない。
こんなに苦しくなるなら、好きになんかならなきゃよかった……
出逢わなきゃよかった
こんなに……
こんなに……っ
『梨佳』
どこからか、その優しい声が聞こえた。
でもどこを見渡しても誰もいない。
『俺は楽しかったよ』
「隼斗……?隼斗なのっ!?」
『ずっと見守ってるから。梨佳は俺のいない世界で幸せになってよ。それが俺の1番の望みだよ』