「えっ、ちょっ、なんで吉沢が泣くの」
「ごめん……っ」
健吾は明らかに動揺している。
今はあたしが泣いちゃいけない時なのに。
分かってるのに、止まらない。
「好きな女に泣かれるとか抱きしめたくなるから。……泣きやんで?」
そう言って頭をポンポンと撫でてくれた。
なぜだかこれが懐かしいと思った。
魔法のように涙がひいて、何も言わずに2人でみんながいる方へ合流しようと歩き出した。
「さっきも言ったけど、俺、吉沢と話せなくなるのやなのね?だから、これからも普通に話したいんだけど……いい?」
「も、もちろんだよ……っ」
そう言った瞬間、緊張が解けたように健吾がいつもの優しい笑顔になり、一緒に笑った。
その日は、みんな笑顔のまま帰っていき、高校最後の日が終わった。