「……だから、もしよかったら俺と付き合ってください。吉沢のことを、守りたい」 「ありがとう……でもごめん。あたし好きな人がいるの」 自分の耳を疑った。 頭で考えるより先に、口がそう発していたのだ。 「そっ……か。うん、わかった。伝えられてよかった」 健吾が足元を見つめながら言った。 好きな人…… 好きな、人…… 好きな人なんていないはずなのに、否定する言葉が出てこない。 その変わりに涙が溢れてきた。