この一言。
たったこの一言だけが伝えたくて。
伝えられなくて。
……でもやっと、言えた。
その瞬間、視界が真っ暗になった。
そして、背中に回される2本の腕。
温かい体温。
あたしは隼斗に抱きしめられていた。
「はや───」
「梨佳」
腕にこもる力が強くなる。
「俺も、好きだよ────」
耳の横で低い声が響く。
体が硬直し、動かない。
頭が回らない。
しばらくすると、隼斗の体がゆっくりと離れた。
見上げたけれど、白い光が目の前に差し、眩しくて目をつむった。
あたしのおでこに柔らかいものが押し当てられて、全身から力が抜けた。
びっくりして、目を開けたけどもうそこは真っ白な世界で。
そのままどこまでも落ちて行きそう。
「幸せになってね……」
優しくて、儚い。
そんな声が遠くから聞こえて、あたしの意識はそこで途絶えた。