「記憶……」
「え?」
「記憶は……?隼斗に関するあたしたちの記憶は……」
隼斗は手をあたしの頬に滑らせ、涙を拭ってくれた。
すぐ近くで交わる2つの視線。
もういっそ、そのキレイな瞳の中に閉じ込められたい。
隼斗は、あたしの頭をそっとなでてからうつむいた。
「それも、消える。俺と関わった人全てから、俺の記憶は消える」
「────……っ」
あたしは声を発することもできず、ただ嗚咽を我慢するのに精いっぱいだった。
さっき隼斗が拭ってくれた頬は一瞬にして、また濡れた。
流れ出した涙が止まる気配はなく、あたしは顔を手でおさえた。
隼斗は、ただ何も言わず、隣に座って頭を撫でてくれた。
でも頭の上を往復する温かいぬくもりは、あたしの涙腺を崩壊させ、全身の震えが止まらないくらい、泣きじゃくった。