「なんかすごいペースでこの家来てる気がするな」
健吾がつぶやいた。
ほんとにね。ごめんなさい。うちの美月が。
「あれ?今日親いねぇの?」
隼斗がリビングのほうを見て言った。
「今日は仕事で2人ともいないよ」
「ふーん、そか」
その瞬間、あの日お母さんが言ってたことを思い出した。
『梨佳さんには幸せになる権利があります』
だっけ?
どう意味だか聞いてみてもいいかな?
チラッと横を見ると、靴を脱いでる隼斗。
───『深追いするな』
……やっぱりやめとこう。
「どうぞ、上がって」
余計なことは何も考えずに中へ案内した。