「俺らこそ長居したら悪いからもうそろそろ帰るよ」
まだ帰ってほしくないな……
わざわざ来てもらったのに、こんなわがままは言えない。
「まぁとりあえず寝とけ」
布団の上から隼斗があたしの頭を叩くようになでた。
布団の中の暗闇で、布団ごしに感じる隼斗の手に胸がキューっとなった。
隼斗の意地悪な顔での優しさにあたしは弱い。
目をつぶったら、まだ微熱があったせいか、話疲れたせいか。
いつの間にか眠ってしまった。
『梨佳、ごめんね』
か細く、消えてしまいそうな声が眠りに落ちる直前に聞いた気がした。
でもそれは、眠りに落ちたあとの夢だったのかもしれない。