「あ、うちここ」
うっかり家を通り過ぎるところだった。
「ん。じゃーな」
健吾は一瞬だけ目を合わせて、少し微笑み、マフラーに顔を隠した。
そのまま後ろを向き、歩き出そうとした。
「ありがとね、健吾!」
健吾ゆっくり振り返り、一瞬悲しそうな目をした気がした。
「あったかくして寝ろよ」
でもその後は、いつものような笑顔を見えて、今度こそ歩き始めた。
来た道戻ってる……
かなり遠回りさせちゃったかな。
申し訳なさと、感謝でいっぱいだ。
───くしゅん
あーさむさむ。
早くこたつ入ろ。
それでお風呂入って、早く寝よ。
あたしは赤くなった鼻をおさえながら、急いで家の中へ入った。