「そっか」
健吾は優しく微笑んで、それから口を閉ざしてしまった。
2人で静かな夜道を静かに歩く。
でもあたしの頭の中を占領してるのは、隣にいる健吾じゃなくて、今日あまり話せなかった隼斗。
いつから隼斗はあたしの頭の中に住み着いてしまったんだろう。
……いや、違う。
あたしの心が、隼斗に支配されてるんだ……
あたしの心はもう隼斗のものになっている。
「吉沢ん家ってどのへん?」
あれ?もうこんなとこまで来てたの?
「もうこの辺で大丈夫だよ、近いから。ありがとね」
手を振ろうと健吾を見上げたとき、挙げかかった手が健吾に勢いよくつかまれた。
「え?」
「あ、ごめっ……」
自分でも無意識だったのか、びっくりしたように手がパッと離れた。
健吾の手が熱くて、まだ感覚が残ってる。