部屋に戻ると、もうすでに冬馬がマイクを握りしめ、熱唱していた。




それはもうストレス発散のように。




その周りでは「いいぞいいぞ〜」と、みんなが盛り上げる。




「酒飲んでないのに、酔っぱらいのテンションだな」




あたしの横で、呆れたように隼斗が笑った。




でも目は愛おしい人を見つめるみたいに、細めている。




その目は誰をってよりは、この空間を。




最近、隼斗は何を考えて、何を想っているのか、読み取れない時が多くある。




そんなとき、あたしはいつもなんとも言えない胸騒ぎがする。




隼斗は何も言ってくれないから、余計に気になる。




でも、踏み込んでいいことなのかわからないから、何も聞けない。




その本人は、ジュースを配り終え、もう座っていた。




あたしも美月の隣へ行き、まだ歌い続けている冬馬を笑った。