保健室につくと、まだ来ていないのか先生の姿はなかった。
特に気にすることなく、彼女をソファーに座らせて、肘を手当した。
状況がようやく飲み込めたのか、彼女は笑顔になって私に頭を下げた。
「ねえ、名前は?保健室来客届けを書くから教えて。」
私の口元をじっと見ていた彼女は、鞄からメモ帳を取り出すと、女の子らしい可愛い字で『坂井 桃子』と書いた。
「ありがとう。」
坂井…桃子ってどこかで聞いたことある気がするな。まあ、気のせいだよね。
「私は頭が痛いから寝る。坂井さんはもう教室戻っても大丈夫だから。」
私はそれだけいうと、奥のベットに横になった。しばらくして、ドアが閉まる音がした。たぶん、さっきの子が出ていったんだろう。
それにしても…どうしてメモ帳?
坂井桃子なんて普通に言われても書けるくらいの漢字なのに。
まさか、彼女も?…なんて。まさかね。
それにしても、頭が痛い。
昨日は、いつにもまして酷かったからなあ。