次の日。

珠利は支度をしてピアノ教室へと出かけた。

携帯にメールが入っていた。

涼夏からだ。

『おは珠利ちゃん。今日も仕事実は来週あたり一緒にご飯たべにいかない』

そんな内容のメールだった。

あんなにお父さんが心配してるのにのんきだなって思った。

珠利は実家を出て兄と二人で暮らしている。

兄・頼太(らいた)は刑事をしている。

出張中で明日帰ってくる予定だ。

頼太が留守している間、珠利は真実を家に呼んだりしている。

普段は真実のアパートで過ごすことが多い。

真実は池袋のバーでバイトしている。

バーでピアノを引いたり、カウンターで接客したりする。

そのバーもマスターが年で体調もあまり良くないので療養のために田舎に引っ越すためにもうじき閉めることになる。

そのため真実も次の仕事を探してる最中だ。

次の職場ももちろんピアノが弾けるところを探している。

珠利は家族に前から真実のことを話してあるが、あまり賛成ではないようだ。

珠利には早く幸せな結婚をすることが、両親の願いだ。

いくらピアノの才能があるといってもそれで生活が成り立ってるわけでもなく、バイト生活になっている真実だと珠利との結婚がまだ程遠いからだった。

珠利はそんな両親の気持ちはよそに結婚を待つといっている。

真実も早く、ピアニストとして一人前になって、珠利の両親に挨拶に行きたいと思っていた。

“いつか、プロポーズの音色をかなでたい”

それが真実の夢だった。