件名:さくらの件

本文:はじめまして。私のいる所ではまだ桜は咲いていません。



「・・・こんなとこでいいか?」

「ってこれじゃあそのまんまじゃないですか!
もう少しこう何かないんですか。相手の気を引くしゃれた一言とか」

「そういわれてもなぁ・・・
相手が誰かもわからないわけだし。んじゃあ
『この辺ではまだ梅が咲いた所です。桜が咲くには1ヶ月ほど早いと思います。ちなみによろしければお名前だけでも教えていただけませんか?』
でいっか」


「・・・もういいです。先輩に文才を期待した私が馬鹿でしたよーだ。ふんっ」

むすっと唇をとがらす千秋。

一瞬その表情がかわいいと思ったのはもちろん内緒である。

「もう送っちまうぞ、ぽっちとな」

後は野となれ山となれ。
千秋の返事を待たずに送信ボタンを押した。



「じゃあ私はバイトがあるんで、帰りますね」

「は?おまえヒマじゃなかったの?」

「私は先輩みたいにヒマじゃないですからっ」

おいおい、じゃあなんのために俺はメールを出したんだ?

まぁそんな予感はしてたんだけど。

「ちゃんと研究しなきゃダメデスヨ?」

「はいはい、分かったから。早く行かないと遅刻するぞ。」

「では、失礼しますねっ」

シュタッと敬礼しでていく背中にむけて盛大にため息をつき、机に向かった。