キーンコーンカーンコーン。

学校のチャイムが、静かであるはずの保健室まで鳴り響く。
それと同時に、保健室の外で、微かに聞こえる
号令の言葉と、椅子と床の擦れる音。

あーぁ。もう終わっちゃった。

もう1時間ぐらい休もうかな?
と思った途端。

「具合どう?」
優しい、保健室の奈緒先生の声が白のカーテン越しに聞こえた。

先生とは、家のことなど気軽に話せて、物分かりのいい、若くて、可愛らしく、いつもお世話になっていた。

『うーん。』
伸びをしながら答える

『ねぇ』
と、先生を上目遣いで見る。

『もう1時間だけいい?』

「ププッ」
先生が吹き出す。

「何、私、女よ? 美里ちゃんは、いつもそれで男の人を落としてるのかもしれないけど、私は落ちないわよ?」

『はぁ。』
と大きなため息

『なーんだ』
と言って、ベットの上に座り、スリッパを履き出す。

私は、家庭環境が悪いから、いつも夜の仕事をしてお金を稼いでる。男は、上目遣いをして、甘えれば大抵落ちる。

『じゃあね』
と、手を振り保健室を後にする。

保健室の前に広がる、広い渡り廊下。
光が差し込んで、緑がみえて、とても私の好きな場所。

(あぁ。綺麗。授業を受ける教室とは離れてて、人通りが少ないのも、好きな場所の1つかな?)
なんて、考えながら、歩いてると

スタスタスタと、前から歩いてくる男子生徒の、歩く音が渡り廊下に響く。

(もぉ。せっかく癒されてたのに。)

距離はどんどん縮まり、すれ違いざまに、相手の人と目があう。

(誰。かっこいいじゃん)

ポケットに手を突っ込みながら、眠そうにあくびをして行った。