「美凪ちゃん、意識が戻ったらしいよ。」


「本当ですか!?」


俺はその言葉にさっきまで流れていたなみだ涙が一瞬で止まった。


「えっ!?知らなかったの?」



「俺、何も聞かされてなかったんですよ。そっか‥よかった、よかった。」



「望。また、悩みとかあったら聞くよ。恋愛相談とか?」


水無月先輩はいたずらぽい表情を見せた。


「ありがとうございます、水無月先輩。」


「じゃあ、今日は帰るね。お大事にね。」




そう言って水無月先輩は帰っていった。





数日後、退院した俺は永倉智未と一緒に美凪の病室を訪れた。


智未はすでに美凪と会ってるらしいが、俺が一緒に行こう!と誘ったときはなぜか、しぶられたのだ。


俺にはこの理由が分からなかった。



コンコンコン


病室につき智未は部屋をノックした。



「美凪、元気?」


智未が声をかけながら入ったので、俺も後に続いた。


部屋に入ると美凪は起きていて本を読んでいた。



「‥う‥うん。大丈夫。」


「そっか。それでね美凪、会わせたい人がいるの。」


俺は智未にかまわず美凪に近づいた。


「美凪、大丈夫か?」


そう言うと美凪は警戒するようにビクッと体を震わせた。



「美凪?」


「‥あなたは‥‥誰ですか?」


「!?」


衝撃的な言葉に俺は言葉を失った。





そっか‥だからなのか‥。智未が会わせるのをしぶってたのは‥。


俺はここでようやく理解した。









記憶をなくした人魚姫



「すみません先輩。言ったらショック受けるだろうと思って。」


「言われないことの方がショックだよ。会う前に言っておいてくれてもよかったよ。」


病院からの帰り道、俺は智未と帰りながら話をしていた。


「本当にすみません!」



「‥で、医者は何て言ってるの?全部、知ってるんでしょう?」


「‥わかりました。全部、話しますよ。」



「ありがとう。」



俺は満面の笑みでうなずいた。

うなずくのを見て智未は話始めた。


「美凪は事故のショックで全部の記憶を失っているようです。私達のことも全部、忘れてしまったんです。日常生活には支障はないみたいですけど、記憶が元に戻るには時間がかかるかもしれないです。」


「それって‥記憶喪失てこと?」


「そうみたいですね‥。」


「そっか‥。なぁ永倉。」


俺は智未を見た。


「なんですか?」