「先輩、美凪のことなんですけど‥。」


さっき、永倉が真剣な顔で俺に話してくれた。


「美凪‥先輩と同じ病院にいるそうです。」



「そ‥そっか‥。」


俺は安堵のため息をついた。


「先輩。安心しないでください。美凪は‥今、危ない状態らしいです。もちろん面会なんかもできませんよ。」


「‥っ‥俺よりも‥ひどいのか?」


「はい。今日、越せるかどうかもわからないらしいです。」


「‥永倉‥それどこの情報?」


できれば信じたくはなかった‥。


「看護師さんが話しているのを聞きました。たまたま、聞こえただけですけどね。」



「‥‥‥‥‥。」


俺はそれ以上、何も言うことができなかった。


「先輩が疲れるといけないので私はもう帰りますね。早く、元気になってください。」


そう言って永倉は帰っていった。









そんな出来事をベッドの上で思い返していた。



人魚姫が大好きな女の子。綾瀬美凪。



あいつは‥あいつは‥




「人魚姫は‥水の泡となって‥消えてしまった‥。」



俺の目からは一筋の涙がすべり落ちた。


後から後から溢れだした涙は止まらなくなった。


涙が布団をぬらす。



「ごめん‥ごめん、助けられなくて‥ごめん‥大好きなのに‥美凪のことが好きなのに‥」



俺は後悔していた。



君を守れなかったこと‥俺が‥手を離さなければ‥



それでも‥俺は‥美凪が戻って来てくれることを信じてる‥。そう信じたい‥。






君は人魚姫なんかじゃない‥。




俺にとって美凪は一人の女の子だから。