中は暗く、涼しいところだった。


奥に行くにつれて水が流れるような音が聞こえてきた。


行くと、そこは崖になっていて下をのぞくと流れが速い川があった。


私はその場に座りこんだ。


そして‥



「ねぇ‥願い事が叶うなら‥私の願いを聞いてよ‥。」



私はいったん口を閉じてもう一度口を開いた。



「この痛む胸をなんとかしてほしい‥。痛みがなくなる方法を教えてよ!!こんな私‥私を助けてよ‥。」



止まっていた涙がまた、溢れ出して止まらなくなった。



その時だった。



「美凪!!!」



その声に振り向くと、息を切らせた須崎先輩がいた。


「先輩‥」



ミシッ‥



そう行った時、どこからかそんな音が聞こえてきた。



「勘違いすんな美凪!!!俺はお前のことしか見えてないんだよ!お前以外の誰かなんかじゃない!お前ただ一人なんだよ!綾瀬美凪!!」


ミシッ‥ミシッ‥



さっきよりも大きくなる音。


これが何の音かわからない。



「戻ろう美凪。ちゃんと説明するから。本当にごめん。」



ミシッミシッ!!!!




そこまで先輩が行った時だった。



私の体が落ちていくのを感じた。


私が座っていたあたりから岩が崩落したのだった。


バシャァン!!



そう思った時には、すでに私は水の中だった。


流れの速い川はあっという間に私を流していく。


必死になって掴むものをと思って探すがなかなか見つからない。



すると‥



「!?」


私の手を誰かが掴んでいた。


それは‥


「先輩‥。」


落ちた私の後を追って、助けに来てくれた須崎先輩だった。


先輩は辛うじて岩に掴まっていたが、手が震えていた。岩から手が離れるのも時間の問題だった。


「美凪、絶対に手を離すなよ!!」


そう言って水にのまれながらも必死に私の手を握ってくれていた。


でも‥このままだと、先輩まで流されてしまうかもしれない。


私のせいでこうなってしまったのに‥先輩まで巻き添えをくらわすのは、申し訳ない。


私はどうなってもいいから望先輩だけは助けて欲しい‥。


私は徐々に先輩の手を離し始めた。



「美凪!?な‥何を‥」


先輩の表情はこわばっていた。


「先輩! 」



離れた瞬間、音が止まった気がした。



多くの水にのまれ私の意識は遠くなっていった。