そう呼ばれ、私は須崎先輩に右手首をつかまれた。



「えっ!?」



「あっ!ご‥ごめん!えーっと‥。」



私も驚いて先輩も驚いているというなんともいえない空気になってしまった。


「あのさ‥このあとって、何か予定ある?」


「予定はないですよ。」



「じゃあ‥今日、話したいことあるし一緒に帰らない?」



「えっ!?」


突然の誘いに一瞬、何を言われたのか分からなかった。



「望ー!早くしろよ!」


後からは先輩の仲間が追いたてるように言う。


「じゃあ、学校の校門前で会おう!じゃあな!」


そう言って先輩は足早に立ち去ってしまった。




一人、取り残された私は顔が熱くなってくるのが分かった。




これって、もしかして‥もしかする!?



そう思って、通路を出てもと来た道を戻ると智未ちゃんと会った。


「美凪!先輩どうだった?大丈夫だった?」


「ねぇ、智未ちゃん!!これって告白だよね!?絶対、告白だよね!!?」


私は興奮して、智未ちゃんの腕を掴んだ。


「えっ!?ど‥どういうこと?ちょ‥ちょっと落ち着いて美凪!説明してよ。」



「あのね、あのね、須崎先輩がこのあと話したいことがあるから一緒に帰ろうて言われたの!」



すると、智未ちゃんの目がみるみる大きくなった。



「よかったじゃない美凪!!おめでとう!なんだ、私が出る幕なんてなかったじゃない!ドジしないでちゃんとやりなよ?」



「うん!わかってるよ、そんなことは。じゃあ私、先に学校に戻ってるね。」


「はーい。また会おうね!バイバイ!」



「バイバイ!!」



そう言って私と智未ちゃんは別れた。







それから、私はゆっくりと電車に乗り学校に向かった。


まだ、陸上部は戻ってなさそうだったので私はいつも練習している室内プールへと向かった。



向かうと誰もいないはずのプールに一人、泳いでいる人がいた。


その人は種村大智くんだった。


大智くんも私の存在に気づいたようだった。



「な‥なんで、綾瀬がいるんだよ。陸上部の‥応援に行ったんじゃなかったのかよ‥。」


大智くんが視線をそらせた。



「試合は終わったから帰ってきたの。須崎先輩と会う約束したから。」



「綾瀬は‥‥須崎先輩のこと、好きなのか?」



「うん。好きだよ。先輩はどう思ってるかわからないけど。それより、大智くんは?なんでここにいるの?」



私は疑問に思ったことをたずねてみた。


「俺は、個人練習。次の試合には必ず出たいからな。まぁ、早くて秋からだけどな‥。」



「そっか‥。大智くんは努力家なんだね。」


そう言うと大智くんは顔を真っ赤にさせた。