「すごい……」


こんな景色見たことない。

怖いけど、不思議で、きれいで。思わずその中に長靴を入れる。


「うわっ……」


足首より少し上くらいの水の流れだけれど、その勢いは強く、体がふらついた。

そう言えば、人は10センチの水でも溺れるって何かで読んだことある。


怖い……。


足を引き抜き、改めてピンクの川の流れを見つめる。

桜の花びらで覆われた水面は、雨に打たれてなお勢いを増し、うねうねと下っていく。

まるで桜の花びらのミルキーウェイだ。


流れる水の中に足を入れるなんて、小学生男子みたいなことしちゃったけど、桜に溺れて死ぬのも悪くないかもしれない。

少なくとも、側溝に流されるよりきれいだし……。

そんなことを考えながら、先を見つめる私の目がですに、突然何かが写り込んだ。


街灯に照らされた桜から、どんどん花びらが落ちていく。

そして桜の樹の下では、街灯の明かりに照らされて、白い何かがひらひらと揺れていた。


最初は鳥だと思った。近くにある大きな公園の池の水があふれて、そこに住んでいる白鳥が、ここまで流されてきたんだって。