一歩足を進めるたび、長靴がガボガボと音を立てる。
なにやってるんだろう、私……。
あのニュースを見た後、私は発作的に背中の真ん中まである髪をお団子にし、ビニールカッパを着て、傘を片手に外に出ていた。
とにかく用水路を見ないと気持ちに収まりがつきそうになかった。
だから私はこうやって豪雨の中、不審者丸出しの格好で歩いている。
死にたいんだろうか。よくわからない。いや、死にたいというよりも、消えて無くなりたいのかもしれない。
用水路の渦に私の存在なんか丸ごと、なかったことにしてもらいたいのかもしれない。
お母さんの期待に応えられない自分が、怖い。お父さんのように立派な医者になれなかったら、私はなんのために生きているのか、わからない。
中学までは夢でよかった。
だけど高校に入ってしまったら、現実が襲いかかってくる。進路という現実が立ちはだかる。
怖い。医者になれない私なんて価値がない。煙のようにあとかたもなく消えてなくなりたい。
ここじゃないどこかに流されてしまいたい。
ああ、やっぱり私も流されたいのかもしれない。うんと遠くに。