彼の向こうには、私同様、いきなりのことにあっけにとられている男たちがいる。
「だから、逃げるんだよ」
自由になったはずの手首がまた掴まれる。
だけどさっき知らない男に掴まれた時のような、嫌な感じはしなかった。
グイッと引っ張られて、そのまま彼は走り出す。
「あっ、おいこら待てっ!」
「なんなんだテメェ!」
後ろから怒号が聞こえて、バタバタと走り出す音が聞こえる。
なんで多賀宮くんが!?
だけど追いかけられている恐怖から、すぐに頭が真っ白になった。
必死で足を動かして、多賀宮くんの背中を追いかけた。