「お兄さんたちと遊び行こうよ。車あるからさ、家まで送ってあげるよ」


最初に声をかけてきた男が、ニヤニヤしながら私の顔を覗き込んでくる。


「いっ、いいですっ……!」


顔をそむけたけれど、タバコ臭い上に、アルコールの匂いもした。最悪だ。


「いいですぅーって、かわいー!」


もうひとりに声真似をされ、ギャハハと笑われて、顔がカーッと赤くなる。


「や、やめて、くださいっ……!」

「おいおい、ジェイケーが怯えてるじゃーん!」


私が抵抗すればするほど、面白がってつついてくる。


全身から変な汗が噴き出してきた。

頭がクラクラして体がふらつく。


「向こうで話そうか」


腕を掴まれて、引きずられた。


「や、やだっ……!」


慌てて腕を引いたけれどビクともしない。


「やだ、助けてっ……!」


その瞬間、何かが私の前に風のように飛び込んできた。


あっと思った瞬間、ドスンと音がして、私を掴んでいた手が離れて、不良がアスファルトの上に倒れていた。


なにが起こったの?


「おい、走るぞ」

「えっ!?」


目を疑った。


なぜか多賀宮くんが私を背中にかばうようにして立っていたんだ。

なぜ、多賀宮くんが?