「10年前に両親が離婚してね、あの子はITエンジニアをしている父親についてドイツに住んでいましたが、ひとりで帰国してきたんですよ」
ということは、今は外国に住む両親から離れて、花山先生と一緒にいるってことなんだろうか。
「そうだったんですか……」
なんだか複雑な家庭事情があるみたい。
だとしても、あの態度はないと思うけど……。
「でも、意味ないとか、そんなことないですよね。勉強は将来のためになりますもん。先生のプリントは無駄じゃないです」
彼は意味なんかないって言ったけど、そんなはずない。
私の言葉に、花山先生は穏やかに笑った。
「新井山さんは優しいですね」
「えっ、そんな、優しくなんかないですっ」
慌てて首を振ったけれど、花山先生は改めて「孫を助けてくれてありがとうございます」と頭を下げた。
「先生……」