思わず真面目に注意してしまった。
なのに多賀宮くんときたら、肩をすくめて椅子から立ち上がると、馴れ馴れしく小さな先生の肩を抱いて顔を近づけた。
「いいんだよ。マジで俺のじいさんなんだから」
「……え?」
マジで俺のじいさん?
「生徒たちには内緒ですよ、新井山さん。彼は私の孫なんです」
先生は顔をくっつけられても特に嫌がる様子もなく、ニコニコしている。
「ええっ!?」
穏やかで、お地蔵さんの生まれ変わりかな?って感じの花山先生の血筋から、こんな生意気で不真面目な男の子が生まれるなんて!
遺伝の神秘だ。驚きしかない。
「じゃあ俺帰るから」
そして多賀宮くんはバッグを掴んで、さっさと教室を出て行ってしまった。
あまりの切り替えの速さに声をかける暇もなかった。
えっ、付き合わせた私には一言もなし?
そりゃ、本人が望んだことじゃないかもしれないけど、信じらんないよ。
思わず真顔になる。