彼が問題に詰まったら説明して、解かせて、その繰り返し。


5教科のプリントは、花山先生がわざわざ用意してくれたもので、なんでこんな不真面目な奴にそこまでしてあげるんだろうと、モヤモヤしたけど。それも今日で終わりだ。


そう、終わり。ああ、よかった!


最終日の今日、花山先生が、様子を見に放課後の教室にやってきた。


「できた」


シャーペンを置いて、多賀宮くんが椅子に座ったまま背伸びをする。


「はい、がんばりましたね」


彼が説いたプリントに目を通し、うんうんとうなずく。

だけど多賀宮くんはそんな花山先生を、冷めた目で見上げる。


「じいさん、なんで俺にこんなことやらせるんだよ。意味ないだろ、無駄だよ」

「たっ、多賀宮くん?」


まさか担任の先生を目の前で“じいさん”呼ばわりするなんて。


他人事ながら、胸の真ん中辺りがキューッと締めつけられる。

危なっかしくて見ていられない。


「ダメだよ、先生だよ」