不真面目でやる気のない嫌な奴だって思うのに、悔しいけれどその一瞬、私は全部を忘れて、ただ私を見つめる彼の星みたいなきれいな目に見惚れていた。


「コラーッ! てめえ、多賀宮! アミカになにしやがる!」


教室の奥にいたタケルが大声をあげて、教室の目が一斉に私に注がれる。


「別に」


多賀宮くんはさっと私から顔を離すと、何事もなかったかのように、スタスタと自分の席に向かっていった。


その背中を見つめながら、私の心臓は口から飛び出しそうで、血がすごい勢いで全身を駆け巡って、なんで私はこんなにドキドキしているんだろうと考えて、きっとびっくりしたからだと自分を納得させた。




それから私は、多賀宮くんの放課後の個人補修に付き合うことになった。

このことは誰にも内緒。


タケルなんかに知られたら、怒られそうだし、なによりいい意味でも悪い意味でも目立っている多賀宮くんとふたりきりなんて、私まで有る事無い事言われそうだし、他人の噂のネタになるなるなんてぜったいに嫌だ。


だから教室から人がいなくなるまで待って、人が完全にいなくなったのを見計らって、私が後ろの多賀宮くんに向けて、机を向かい合わせにする。