それに私に面倒を見る義務があるなんて、冗談だって思いたい……。


教室の入口から、窓際最後尾の彼の席を見る。


多賀宮くんはまだ来てなかった。彼はいつもギリギリか、午前中に来なければ昼からしか姿を見せない。

休まないけど、かなり不真面目な生徒だ。


今日彼が来たら、ちゃんと聞いてみよう……。


そう心に決めた瞬間、

「よう」

「きゃっ!」

いきなり声を掛けられて、飛び上がらんばかりに驚いてしまった。


急なことに足もとがふらついて転びそうになったけれど、トスンと体が受け止められる。

ハッとして振り返ってみれば、多賀宮くんが私が転ばないよう受け止めてくれていた。


「なんだ。軽いな、お前」


頭上から響く声に、ワナワナと体が震えた。


「な、な、なっ……」


偶然の事故とはいえ、あまりの近さに顔がカーッと熱くなる。


けれど多賀宮くんはさして気にしていないようだ。そのまま私に顔を近づけた。


「昨日の約束、覚えてるだろうな」


誰にも聞こえない小さな声で、彼は私にささやきかける。