頬の辺りに視線を感じる。見られている。
やだな……。なんで見るの。
なにも気づいてませんという態度で、鞄に勉強道具を仕舞った。
「アミカですけど」
「新井山病院の……新井山雨美花?」
「病院はおじいちゃんの病院です」
その瞬間、多賀宮くんは、椅子から立ち上がり、私の手首を掴み引き寄せた。
「なに、急に?」
さすがに驚いて顔を上げると、そこには私以上に驚いた顔をした多賀宮くんがいた。
切れ長の澄んだ瞳が熱っぽく輝いて、キラキラ光っている。
「なんだ、お前なのか」
「お前なのかって、なにが……」
なんだか怖い。ドキドキする。
「俺が死ぬのを邪魔した。お節介女」
その瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けた。
死ぬのを邪魔した……って。まさか。
突然、私の意識が真っ暗闇の中に放り出されたような気がした。