やればできるのにやらないなんて、贅沢極まりなさすぎる。


「じゃあ私、帰るね」

「いや、待て。これから一週間、やらなきゃいけないんだと」

「そう……」


だからなんだというんだ。不真面目な彼に付き合う暇なんてない。

私にはたった3年しかない。遊んでいる暇もない。

毎日少しでも勉強して、医大に近づかないと、お母さんをがっかりさせてしまう。


机の上のノートを片付けていると、

「お前、名前なんだっけ」

と、多賀宮くんから問いかけてきた。


「新井山です、よろしくねって言いました」


私はあれから地味に10日以上、凹み続けていたというのに……。

やっぱり聞いてなかったんだ。


イラついてつっけんどんな声になる。


「下の名前は」


私の名前なんて知ってどうするんだろう。


「必要ある?」


さらにイラッとしながら問いかけた。


「ある」


なのに、ハッキリ言われた。その声にドキッとする。