「え?」
好き?
好きも何も、あの第一印象では、怖いとしか思わなかった。挨拶だって無視されるし……。
「男っぽいのに、なぜかきれいに見える男子だなとは思うけど……」
「キレーかぁ……残念、タケルにはない領分だね」
カナがクスクスと笑って「うるせー」と、タケルが余計唇を尖らせる。
「私は、好きとかよくわかんないな」
とりあえずそう言って、お弁当のウインナーを口に運ぶ。
「アミカってほんと恋愛に興味なしだよね」
カナが呆れたように肩をすくめた。
「人生に潤いは大事じゃない? 別に本気じゃなくても、アイドルとか俳優とか見て、ときめいたほうがよくない?」
「うーん……」
言われてなんとなく、テレビで見るイケメン俳優の顔なんかを思い浮かべてみたけれど……。
結局テレビの中の人はテレビの中の人で、距離がありすぎた。
カッコいいとは思うけど、まるで実感がない。
物心ついたときから、男の子を好きだなんて思ったことがない私は、恋をするのに向いてないんだろう。