ビックリした。
私だけじゃなく、教室の30人の生徒みんなが、ビックリしたと思う。
だけど転校生の多賀宮くんは相変わらず知らん顔で、微動だにしない。机に伏せたまま寝ている。
これもすごい度胸だ。大物だ。
「おいてめぇ、挨拶くらいしろ!」
タケルの怒りはそこで頂点に達したのだけれど、すかさず先生が「元気が有り余ってるみたいですね。教材取ってきてもらえますか」と、タケルを教室から出て行かせて、なんとなく教室の空気が緩やかに元に戻っていく。
「はは、タケルのほうがよっぽどうるさくて教室を乱してるわよね」
斜め前方に座っているカナが振り返って笑うから、一応私も小さく笑って返す。
だけど多賀宮くんは、今後も教室をかき乱す、台風の目になるような気がした。
なんとなく。