「ははは、なかなか言いますね。空いたところにどうぞ」


教室の中で楽しそうに笑ってるのは花山先生だけで、そして多賀宮くんは特に顔色も変えず、なんと窓際最後列の私の後ろに新しい机を持ってきて、座ってしまった。


私の後ろ?


今まで背後には誰もいなかったから、不思議な感じがする。


ゴクリと唾を飲み込み、一応振り返って「新井山です、よろしくお願いします……」と声をかけてみた。


だけど彼は私を見ることもなく、机に突っ伏してしまった。


豪快に無視された……。

いや、確かに用件がない限りは話しかけてくるなって言われて早々だったけど。

挨拶くらい、返してくれてもいいのに。


なんだか恥ずかしい。挨拶なんかしなきゃよかった。


気まずい気持ちのまま前を向くと、タケルと目があう。


どうやら一部始終を見られていたらしい。

当然、瞬間湯沸かし器みたいなタケルが黙っているはずがない。


大きく見開かれた目は、多賀宮くんに注がれて、今にも爆発しそうな熱を秘めていた。


これはマズイ。


「タケル、あのね」


自分は気にしてないと口にしようとしたその次の瞬間、

「おいコラァア! 挨拶無視すんなやァァア!」

と椅子から立ち上がり叫ぶ。