ちなみにおばあちゃんは、私が生まれる前に亡くなっている。体が弱い人だったらしい。


「もう立てるか? 大丈夫そうだったらこれに着替えなさい」


おじいちゃんが量販店の紙袋を差し出す。病院の近くに、深夜まで空いている店がある。

きっと誰かに頼んで買ってきてもらったんだろう。


「うん」


私は簡易手術着に着替えさせられていた。

確かにびしょ濡れだったし風邪でもひいたら大変だ。


ベッド周りにカーテンを引き、着替えながら祖父に問いかけた。


「ねぇ、彼は本当に大丈夫なの?」


着替えながら脳裏に浮かぶのは、桜の花びらに溺れる彼の顔だった。


もしかして、私を気落ちさせないために助かったなんて嘘をついているんじゃないか。


ついそんなことを考えてしまうのは、桜に溺れた彼が人間離れした美しい顔をしていたからかもしれない。

私が神様なら、きっとお空の星にする。


「ああ、着替えたら彼の顔を見てみたらいい。ここにいるから」

「ここにいるの?」


Tシャツとを頭からすっぽりとかぶった私は、カーテンから顔だけを出して背伸びをした。


「あ、本当だ……」


私の隣のベッドに、点滴を打たれた状態で彼が眠っていた。