だったら諦めるの?


諦める?

だめ、諦めるなんて、絶対ないよ!

救急車が来るまでやらなきゃ!


「落ち着いて、アミカ。そう、呼吸が戻らない時は、胸骨圧迫30回に、人工呼吸2回を繰り返す。胸骨圧迫30回に、人工呼吸2回を繰り返すっ!」


胸の真ん中あたりに手のひらを重ねて置く。そして思い切り圧迫した。


これは本で読んだ知識だ。もちろん実践するのは生まれて初めてだ。


もう、必死で、本当に必死で、氷みたいに冷たい唇に自分の唇を重ねて、息を吹き込んで、水を吸って重くなったその人のパーカーごしに、心臓マッサージを繰り返す。


「死なないで! ねぇ、目を覚ましてよ! 頑張って、死なないで! 息を吹き返してっ!」


5分、10分と簡単に時間が過ぎていく。

終わりの見えない作業に、体力のない私の呼吸はすぐに苦しくなった。ゼエゼエと息が上がる。


このままでは私まで呼吸が止まりそうだ。


ウーウーウー……。


朦朧とする意識の中で、救急車のサイレンが聞こえる。


「通報された方ですか!」


目の前に救急車が止まり、中から救急隊員が降りて駆け寄ってくる。