「ま。とりあえず、ちゃんと走れよ」

それだけ言って、黙ってしまう。

ちゃんと、走る。

そ、そうだよね。まずは、ちゃんとバトン渡すところからだよね。


『それでは、次の種目。学級で対抗のリレーを始めます』

アナウンスで、私たち代表の人は位置につく。

緊張は止まらないけど、さっき花恋に励ましてもらったし。

それに、恭介君にも…


第一走者の人が、走り始める。

「がんばって!」

私の必死の声援、聞こえてるのかな?

走ってる間は、声なんて聞こえないよね。

次、私の番だ。

よし。

いま、私たちのクラスは2位。


「中武さんっ!」

そういってバトンを託された。

ちゃんと走る。ちゃんと走る。