だから、ずっとずっと悔しかった。
何も出来なかった自分が。


「何言ってるの。優衣が負い目に感じることないんだから」

そう言って、私の頭をなでてくる。


母親の温かさ。

彼氏とか、友達とか。そういうのじゃない温かさ。


その優しさに、涙が溢れてくる。

「優衣が毎日笑ってくれてた。それだけで、本当に私幸せだったのよ?

こんなの親だから嘘ついてるって、子供安心させたいだけって思ってるでしょ?

でもね、本当なのよ。これが。
親は、子供の笑顔が何よりの救いなの。

だから、優衣はどんな事があっても笑って。周りを幸せにしてあげて?」

そう言うと、お母さんは私を強く抱き締めた。


「お母さん…私。戻るね。」

戻るとは、もちろん現実に。

「うん。お母さんは、いつも優衣を上から見ててあげるから。

1人じゃないんだからね?恭介君と幸せにね」


私の涙を拭ってくれた。

お母さんの笑顔が光でだんだん薄くなっていって、気づいたら目の前が暗かった。

あ、体の感覚。