翔君は、私の背中をグッと押してそう言った。

「早く行かないと、本当に置いていかれるよ?」

花恋も笑いながらそう言った。


そうだ。早く行かなくちゃ。



走って教室を飛び出す。

恭介君のところまで行くのに、そんなに時間がかからなかった。

ゆっくり歩いてくれてた…?



「恭介君…」

恭介君は黙ったまま。

「堀先生には弟がいるんだって。」

とりあえず急に話しかけてみよう。

「先生が弟の話をする度に、恭介君が昔の話をしてくれた時みたいな顔をしたの。

それが…どうしても気になって。」

そうなの。これが聞きたい理由。

恭介君が悩んでる時みたいな感覚になった。

だから、少し話を聞きたいって思った。


でもそんなのは、勝手な私の感覚であって、恭介君に強制できることじゃない。

それはわかってる。

「勝手でごめん。」