「俺は瞬間的に怒りを覚えた。そいつよりも腕が上なのになんでそんな事言われる筋合いがあるのかと。

でもそいつは言ったんだよ。『お前の店を知ってるやつは日本じゃわずかだぞ。天狗になるなよ』って。

俺は忘れてたんだよ。俺の本当の夢を」


「うん…」

「最も有名ってことは…俺の店を知らない奴がいるなんてのは、まだまだってことなんだよ。

俺の店の名前聞いて、あぁあの店かって。
好きな店は俺の店であってもらいたい。

そういうのを目指してんだよ」


夢を語る人の顔は真剣で、何よりイキイキしてる。

だから応援したくなる。


「俺…が、アメリカに行くことになったら…」


やっぱり。そういう事だよね。

「平気だよ、私は」

「優衣…」

「遥は私の大事な人。応援するのは当たり前だよ。
それに、私には恭介君がいてくれる。
安心して修行してきていいんだよ!」


遥の背中をバシッと叩いてそう言う。

私の笑顔で、遥も少し笑ってくれた。


「痛えよ」

って言いながら。