じゃ、俺も帰るか。
なんてそう思ったときに、優衣からの着信。
何かあったのかと思って慌てて出たら、男の声。
心配なんてもんじゃなかった。誘拐かと思った。
そう思ったのもつかの間。
堀と名乗った。
いろんな状況でかくまってると言われる。
「いろんな状況って何だ」
そう聞いたのに、こう言うときに限って教えてくれない。
俺は言われた場所まで走っていった。
黒い車から、手を振ってくる奴がいた。
あれか、優衣の乗った車は。
優衣が車から出てくると、俺は少し安心した。
堀がいてくれてよかった。
どうもストーカーされたらしい。
一人で帰るからだと言ってやりたかったけど、やめた。
男恐怖症のこいつには、怖かっただろうな。
早く安心させてやりたくて、抱きしめたくなる気持ちを抑えて頭をなでるだけにした。
それなのに、こいつは俺に抱きついて来やがった。
しかも、泣き顔で。
俺の気持ちも知らないくせに。
「ほんっとにばかだな」
そう言うのが精一杯だった。
ずっと、俺の所にこうしていればいいのに。
そんな願望に駆られる。
抱きしめたら壊れそうな、ちっさい体。
今は、こいつを守りたいだけだった。