「ここ」
恭介君に連れてこられたのは、古い喫茶店だった。
たぶん古そうに見えるだけだと思うけど。
お店に入って、二人用の席に案内された。
私と恭介君は向かい合うように座る。
「何か食べる?」
「あ、えっと。シフォンケーキを」
店員さんに注文をした。
その場から店員さんがいなくなって、沈黙ができる。
なにか話そう…
「そういえば、優衣甘いもんが好きなんだな」
先に話をしてくれたのは、恭介君だ。
「あ、うん。結構好きで、一番好きなのはやっぱりチョコ系の甘いの」
私もそれに続いて話題を広げる。
「まぁ、何となく分かってたけど」
素っ気なく聞こえて、本当はそうじゃない恭介君の返事が、恭介君らしくて嬉しかった。
しばらく経って、注文した物が運ばれてきた。
私は目の前のシフォンケーキに完全にロックオンだった。