「好きだったよ、柳瀬」


全力で好きだった。

全力で片思いしていた。

中学二年生のときからずっと――。


たくさん泣いたはずなのに、好きって感情が涙に代わって溢れ出す。

「やだな、もう」

自傷気味に笑ってしまう。


涙を拭い冷静に黒板を見ると恥ずかしさが込み上げてきた。

「なにやっているんだろう、私」


黒板に書いたって後悔は消えるわけじゃないのに。

見回りの先生が来る前に早く消して帰ろうと黒板消しを手にしたとき。


「消すなよ」

「――え?」


物音なく背後から聞こえてきた声と、掴まれた黒板消しを持つ手。

私の手を掴む腕を辿っていくと、強い瞳を向ける笹沼くんと視線がかち合う。

「……笹沼くん?」

どうしてここに? 帰ったんじゃなかったの?