一週間以上書かれていた私と柳瀬の名前は消えかけていた。

消そうと黒板消しを手にするものの、思い留まってしまう。


なんでかな? 消したくなかった。
柳瀬と自分の名前を――。


「柳瀬……」


「ありがとう」って言ってくれたときの柳瀬の笑顔が忘れられない。


柳瀬が好きだった。初恋だった。

いつも笑っていて優しくて明るくて。

誰に対しても平等で。

挙げたらキリがないほど好きだったの。


震え出す手。

黒板消しをそっと置き、代わりに手にしたのは白いチョーク。

シンと静まり返る校舎。自分以外いない教室。

もう二度と伝えられない想い。


『柳瀬が好き』

小さく書いた自分の想い。

声に出して言えない私の可愛そうな想い――。