もう後悔はない。
これでよかったと思えるから。――でも。


「……やっぱり柳瀬に好きって伝えたかったな」

ポツリと漏れてしまう本音。


叶うのなら柳瀬に好きって言いたかった。

振られると分かっていても、自分の想いを伝えたかった。


ポタポタと机を濡らしていく涙。
堪えていたものが一気に溢れ出す。


誰もいないし、いいよね。今だけは泣いても――。

そう自分に言い聞かせ、声を押し殺して泣いてしまった。


どれくらいの時間が過ぎただろうか。

やっと涙が止まった私の目に映ったのは、黒板の右端に書かれた私と柳瀬の名前。


「消し忘れちゃったんだ」


見たところ日誌は教壇にも柳瀬や私の机にもないから、柳瀬が書いて先生に出してくれたのだろう。

けれど週番の名前を変えるのを忘れていた。


鼻を啜りながら立ち上がり、ゆっくりと黒板の方へ向かっていく。