なにこれ、どうして私ってばドキドキしちゃっているわけ?

胸に手を当てながら改札を抜けホームに向かっている途中、どうしても気になってしまい振り返ると、立ち止まり私を見送る笹沼くんと視線がかち合った。


「あっ……」

思わず声が漏れてしまい、咄嗟に手を振るとカレもまたおずおずと手を振り返してくれた。


たったこれだけのことで、胸の奥がギュッと締め付けられていく。


恥ずかしくてどうしようもなくて、慌ててホームに向かい電車に飛び乗った。

ゆっくりと走り出す電車。

空いている席に腰掛けるも、いまだに心臓はバクバクいったまま。

そしておもむろに右手が触れてしまうのは、さきほど笹沼くんに撫でられた頭。


さっきの、なんだったんだろう。

どうして笹沼くんは私の頭を撫でてくれたの?


思い出すとまた更に顔が熱くなってしまう。


なに考えているのよ! あれはただ慰めようとしてくれただけ!

第一笹沼くんが好きなのは光莉だし!


そうだよ、笹沼くんが好きなのは光莉。

私が傷つけてしまった光莉なんだ。


なに呑気にドキドキしちゃったりしていたんだろう。

光莉のこと、あんなに傷つけちゃったのに。