「帰り、気をつけて」

そう言うと伸びてきた手は、迷うことなく私の頭をそっと撫でた。

頭上に感じる大きな手のぬくもりに心臓が飛び跳ねてしまう。

くすぐったくて胸の奥が熱くなる。


「見てみて、可愛い高校生カップル」

「本当だ」

聞こえてきた声にさらに心臓は早鐘を鳴らし始め、堪らず声を上げた。


「えっと、あの……! 笹沼くん?」


されるがままだったけれど、様子を窺うように顔を上げていく。

すると笹沼くんは我に返ったのか、すぐに手を引っ込めた後、頬を真っ赤に染めた。


「悪い、つい……」

「ううん。大丈夫」


つい、ってなに!?

伝染するように私まで顔が熱くなってしまい、聞けるわけない。


「じゃあまた来週」

「うん、また」

ぎこちなく挨拶を交わし、互いに背中を向ける。