「でもさ、かおるこんなとこ居ていいのか??今日って、これからアレだろ?」

タバコを消した裕太は座り込んだ。

「だからここに来たのよ。」

かおるは俺に昔から好きだったお菓子とジュースを袋から出した。

そうだ、今日はかおるが昔から続けているピアノコンクールの発表会だったな。

「ほんの気持ちってヤツか、かおるらしいな。」

裕太の皮肉ともとれる発言にかおるは小さな声で「そうよ」と呟いたのを俺はしっかり聞いた。

「ねぇ、覚えてる?小3まで私たち同じ地区に居て――」

あぁ、今でも良く覚えている。

俺と裕太、それにかおるは同じ地区の同じ団地に居たんだ。

「茜、可愛かったよなあ」

今にも鼻の下が垂れ落ちそうな顔をした裕太はやはり間抜けだった。

それを横目に血の通っていない蛇の様な目付きをしたかおるはため息混じりにこう言った。

「茜の事すごく好きだったもんね、裕太は。」

そう、俺たちの幼なじみはもう一人居る。