「裕太、タバコ捨てなよ。」

そう言って裕太のそばまで女はやって来た。

「あららー、かおるちゃん。居たのー?気づかなかったよ」

まるで自分の動揺が表に出ているかの様な間抜けな笑い声は、聞くに耐え難いものだ。

「今度は停学どころの話じゃ済まされないわよ。」

その美しく華奢な身体は硝子細工みたいで、脆さと不思議な魅力を兼ね備えている。

彼女は水沢かおる。

俺たちが通う高校の同級生で生徒会長をやっていた。

彼女も裕太と同じで長い付き合いになる。幼なじみと言うやつだ。

所属していた陸上部では持ち前の足の早さを生かし、3年連続で全国行きを果たしてベスト8にも入っていたらしい。

全校集会で彼女が壇上で表彰される事など珍しくないのだ。