弘輝は、外された腕をなんとか戻し、服に着いた汚れを払った。
陽はかなり傾き、一人公園に取り残されていた。
肩が痛む。
これでも喧嘩は強い方だ。毎日鍛えてもいるし、睡眠も取っている(学校でだが)。
それでもすんなりと地面に転がされてしまった。
体格はむしろ自分の方がしっかりしているのに、完全に不意を着かれた。真尋のことに集中しすぎていた自分に、苦笑する。
だが、あれは確かにコンビニで見た少女だった。
さらさらとした長い黒髪が風にたなびき、大きな瞳は透き通っていた。
すぐに男に連れていかれてしまったが、やはり地味女は真尋だったのだ。

「真尋…俺は」
そう呟いた声は夕方の風に流されていった。