公園から少し走った空き倉庫。
人の出入りはないので、何か話すときにはちょうど良い場所だ。
「まず聞きたいんだけど、その制服どうしたの」
その質問が来ることはわかっていた。
「私、ここの生徒なんです。先輩には隠してました」
そう言って髪をおろし、眼鏡をかける。
「…!」
謙太郎は息を呑む。

「じゃあ、龍とよく話してたのは」
「学校内のことや最近の動向について話してたんです」
龍、というのはS南校の生徒会長の龍哉のことだ。
謙太郎は龍哉の友人だ。
龍哉と共に生徒会に所属しているだけあって、学校でも真尋のことはよく目にしていた。
「こういう姿で生活しろ、というのも龍哉先輩の意向です。謙太郎先輩にも他人のふりをしておけ、と。」
だから、嘘ついていてすみませんでした。と真尋は頭を下げる。

『君、龍と知り合いなんだ。名前、何て言うの?』
龍哉と会話している真尋を見かけた何度目かのとき、何気なく話しかけた会話を思い出す。
『あさひ…です。山本 あさひ。』
山本というのは、奈那さんからとったんです。旭、というのも、私の名字です。先輩のフルネームも不本意とは言え知ってました。と真尋は続ける。